芝 からだ・ぶんかラボ

しなやかな身体が意思決定効率を高める?-ソマティック・マーカー仮説について考える


2019年4月27日

絵手紙

 

使い古したマグカップでコーヒーを飲む。

 

いつもの習慣です。

 

先日、食器棚の奥にあった唐津焼の湯飲み茶わんでコーヒーを飲んでみました。

 

あら不思議。

 

いつものコーヒーが別様に感じられるではありませんか。

 

そんな中、ソマティック・マーカー(身体信号)仮説について考えてみました。

 

ソマティック・マーカー仮説ってなに?

 

ソマティック・マーカー仮説とは、神経学者アントニオ・ダマシオが主張する仮説です。

 

いったいどんな仮説なのでしょうか?

 

これは私たちの行う意思決定というものが、じつは情動的な身体反応(心臓がドキドキしたり、口が渇いたりするなど)に影響を受けているのではないかという仮説です。

 

つまり身体的な感情が前頭葉に影響を与えて、たくさんある選択肢をふるいにかけ、意思決定を効率的にするのではないかとする説です。

 

この説に従えば、意思決定をするにあたっては感情や情動的な反応は排除するのではなく、むしろ積極的に利用したほうがよいということになるでしょう。

 

批判もありますが、とても興味深い仮説だと思います。

 

ある情報に接したときの感情や身体反応が意思決定の効率を向上させるのであれば、しなやかで感受性の高い身体のほうが有利になるかもしれません。

 

例えば茶器を手のひらで包み込んだとしましょう。

 

そのとき茶器の肌合いや重みといった情報は手を介して伝わってきます。

 

しかし手が麻痺していて触覚や重量感覚がわからなかったらどうなるでしょうか。

 

本来茶器の情報によって呼び起こされる感情や身体反応は十分に起こらないでしょう。

 

逆に非常にセンシティブな人は、茶器のさまざまな情報を受け取ることができ、呼び起こされる感情や身体反応もより繊細なものになるでしょう。

 

もし、しなやかな身体の人のほうがより繊細に感情や身体反応を呼び起こせるとしたら、意思決定の効率性にも影響が出るかもしれません。

 

世界に対して開かれた身体でいよう!

 

ここまでの話をまとめましょう。

 

ソマティック・マーカー仮説とは、情報に接することで呼び起こされる感情や身体反応が意思決定の効率を高めるというものでした。

 

そうであるなら、身体の感受性が高い人のほうが、より繊細に感情や身体反応を呼び起こせる可能性があるぶん、意思決定の効率性に優れている可能性があります。

 

つまりこの説に従うなら、判断力や意思決定力を養うためには、世界に対して開かれた身体(しなやかで繊細に感じ取れる身体)であるほうが有利だということになるでしょう。

 

かたく力んだ身体は外界とのしなやかなつながりを拒んでいます。

 

このような身体で呼び起こされる感情や身体反応は単調なものにならざるをえません。

 

したがって豊かな感受性の身体の人に比べ、判断力や意思決定力はいくぶん鈍くなっている可能性があるでしょう。

 

この世界を単色でしか見られないよりも、彩り豊かに感じられるほうが多くのことに気づくことができるはずです。

 

そしてそれが意思決定効率を高めているとしたら・・・

 

もうかたく閉ざされた身体でいるわけにはいきませんね。

 

そのためにはしなやかな身体、すなわち感受性の高い身体であることが大切。

 

開かれた身体であるためには、いろいろなものを見聞きしたり触ってみたりすることです。

 

小さなことからでかまいません。

 

日常の習慣にちょっと変化をつけてみませんか。

 

そう、唐津焼の湯飲み茶わんでコーヒーを飲んでみるといったように。

 

そのときのわずかな違いに気づけたとき、あなたの身体は前よりもしなやかになっているはずですよ。

 

*画像は(一社)日本絵手紙協会登坂和雄会長によるものです。

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